ふるさとの味について
日本と関わる中で、
ひとつの問いが心に残りました。
これから、何をつないでいけるだろう。
世代をつなぎ、日本の暮らしに息づく文化を次へ。
日本との関わりは、東京で暮らした経験や仕事、そして各地を旅する中で続いてきました。
「ふるさとの味」は、昔の日本を懐かしむための取り組みではありません。
地域に残る技や営み、家族の記憶、日々の暮らしの中にある知恵が、これからどのような形で続いていけるのだろう。そんな問いから、少しずつ形になってきました。



私の原点
ある風景が、その問いをはっきりさせました。
何年も前、能登半島を歩いていた時のことです。
人の姿が少なくなった集落や、静かになった家々を見ながら、私が感じたのは、建物が失われていく寂しさだけではありませんでした。
そこには以前、仕事があり、食卓があり、人と人とのつながりがありました。
長い時間の中で身についた技。家族の中で自然に伝わってきた知恵。その土地ならではの暮らし方。
目には見えにくいものほど、一度途切れてしまうと、取り戻すのが難しいのかもしれない。
その風景は、それまでぼんやりと感じていた問いを、自分の中ではっきりさせるきっかけになりました。
今も生きているものを、知り、記録し、必要とする人へつないでいくことはできないだろうか。
「ふるさとの味」は、その問いを今の時代にもう一度考えてみる取り組みです。
FURUSATO NO AJI
温故知新
過去に学び、今を見つめ、これからへつなぐ。
受け継がれているのは、ものだけではありません。
地域の文化や営みは、博物館の中だけに残っているものではありません。
家族で続けてきた商い。小さな工房。台所の味。旅館や農家。地域の祭りや日々の習慣。
そこには、言葉だけでは伝えきれない技や判断、人との関係、そして地域の記憶があります。
一つの店や仕事が途切れる時、失われるのは商品や建物だけではないかもしれません。
けれど、受け継ぎ方は一つではありません。
家族の次の世代かもしれない。新しい担い手や弟子かもしれない。地域の外から関わる人かもしれない。
あるいは、一つの出会いや小さな協力から、新しい形が生まれることもあります。
「ふるさとの味」は、地域の声を聞き、物語を伝え、人と人をつなぐことから、その可能性を探していきます。
大切にしたいもの
つないでいきたいもの
「ふるさとの味」が目を向けるのは、特別な文化財だけではありません。地域の日々の暮らしの中で、今も受け継がれているものです。
食と地域の味
地域の食材、受け継がれてきた料理、家族の味。食には、その土地の記憶があります。
手仕事と技
長い時間をかけて磨かれてきた技術と、それを支える知恵や経験。
家族の商い
店や仕事だけでなく、そこに積み重なった人との関係や物語。
地域の暮らし
人、場所、仕事、祭り。日々の暮らしの中で続いてきた小さな営み。
世代をつなぐ
受け継ぐ人と、新しい風。
長年その仕事を続けてきた人には、経験があります。言葉では説明しきれない判断や技、そして地域との関係があります。
一方で、次の世代には、新しい道具や考え方、新しい市場とのつながりがあります。
どちらか一方を選ぶ必要はありません。
大切なのは、古いものをそのまま残すことでも、すべてを新しくすることでもなく、経験と新しい力が出会える場所をつくること。そこから、次の形が見えてくるのかもしれません。
向き合い方
まず、話を聞くことから。
すべての伝統を残さなければならないとは考えていません。
また、外から来た人間が、地域にとって何が必要なのかを最初から分かっているとも思っていません。
私は地域の当事者ではありません。だからこそ、まず話を聞くことが大切だと考えています。
店を続けてきた人は、何を望んでいるのか。家族は、何を大切にしているのか。地域は、何を残したいのか。そして、何が変わってもよいのか。
まず聞くこと。その上で、物語を伝えたり、人をつないだりすることで、小さな可能性が見えてくるかもしれません。

小さく始める
まずは、一つの地域から。
「ふるさとの味」は、まだ形をつくっている途中の取り組みです。
だからこそ、最初から大きな仕組みをつくるのではなく、一つの地域、数軒の家族経営の店や工房、食文化などから、小さく始めたいと考えています。
見つける。話を聞く。記録する。つなぐ。そして振り返る。
それぞれが本当に望んでいることや、抱えている課題を知る。事業承継、技術継承、弟子や担い手との出会い、物語の発信など、何が役に立つのかを小さく試してみる。
自治体や地域の団体との最初の協力も、大きなものである必要はありません。
地域で話を聞くべき人や場所を、一緒に見つけること。そこから始められれば十分だと思っています。
つながる
小さな対話から、始めませんか。
地域に残したい物語がある方。長く続けてきた仕事や技について、誰かに話してみたい方。
地域の未来について考えている方。あるいは、この取り組みに少し興味を持ってくださった方。
まだ企画書は必要ありません。まず、お話を聞かせてください。